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<『Printers Circle』(JAGAT/日本印刷技術協会) 1月号 への寄稿分>
昨年末の話。毎年、販売枚数低下に苦しんでいた(官製)年賀はがきだがディズニーの年賀はがきを作ったら10月に早々と売り切れた。日本人にはあの長過ぎてなかなか馴染めないアメリカの大統領選では、オバマ圧勝を告げた号外を歴史的な出来事を記念にと買占める黒人により完売したというニュースもあった。正月には年に一度しか参拝しない神社の前の露店では、相変わらず高島易断の暦も隠れたベストセラーとなっている。筆者の勤める会社で版権管理をしている遊戯王カードも海を越えた韓国では現在でも出せば出すだけ売れまくっている。
一方、広告業界では、ネット広告費が雑誌を抜き、次のターゲットは新聞だとか、雑誌の休刊が相次ぎ各社WEB事業へ参入し次世代ビジネスを模索中だとか、量販店のチラシも電子化だとか所謂“紙離れ”を悲観する話題ばかり。
しかし、ネットだ地デジだと業界が騒いでいる中、家ではテレビ、PCがあり屋外ではデジタルサイネージ、携帯、ゲーム機、そしてシネコンといったあらゆる情報コンテンツを様々なデジタル端末(マルチウィンドウ)で摂取する1990年以降に生まれた世代「デジタルネイティブ」がいる。消費の主役に躍り出てきている彼らには紙はどう映っているのだろうか。確かに彼らの生活においても“紙離れ”は進行している。とは言え、駅ではフリーペーパーを手に取り、古本屋ではコミックやゲーム攻略本に目を通す。我々の危惧などそ知らぬ顔、まったく関係ない話なのであろう。既に、彼らは必要に応じてデジタルとアナログを使い分けられる素養を持っているわけで、こうした現象は社会的なニーズとして波及している。
別に彼らに限った話でもない。事実、企業ではこのところの不況でさらなる経費の節減を強いられ、(エセ)エコブームも手伝って、ペーパーレス化が叫ばれているさなか、相変わらず文具通販業界ではコピー(PPC)用紙の需要は高い。古紙パルプを配合し、環境への配慮はしているものの、Webサイトでも、(特にニュースサイトでは)、記事ごとに印刷が可能なアイコン(ボタン)があり、必要なものだけ出力が可能な機能を実装するところが増加中だ。家庭では高機能で安価なカラーコピー機がシェアを伸ばしている。
雑誌もすべて下降気味ではない。例えば昨年11月に発刊し部数を伸ばしている楽天の育児誌とグルメ誌がある。ともに紙媒体から新規顧客をネットに誘導するのが狙いだ。
また、『百楽』という雑誌をご存知だろうか。富裕層に人気の雑誌だ。同ターゲットのSNSとのクロスメディア展開では、高い広告効果を示す。注目すべきはこの経営母体は、出版社ではないことだ。シニア世代の各種セミナー及びシンポジウム、人材派遣事業、不動産賃貸業を営んでいる。キーワードは、『マーケットインサイト』。
要は自らの保身を優先せず、顧客のニーズをいかに経営に注入するかではないだろうか。出版社の大半がこのご時世に記事や画像等の二次利用における著作権保護にこだわり、新聞は今後予想される道州制によるテリトリー死守に躍起になっていては先は暗い。これまでの旧態依然とした“古い市場意識”“固定化された事業方式”では当然、生きてはいけない。
新たなビジネスモデルを生むためにも、まずはその源となる会社モデル(組織体系)から革新が必要な企業も多い。今言えることは、確実に“生存領域”があること。そしてやり方によっては拡大すること。今号でこの連載も最後になるが、ぜひ、読者の皆さんへエールを送りつつ、奮起に期待して結びとさせていただく。
永い間、ご拝読、多謝!
社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)「プリンターズサークル」1月号へ寄稿]
http://www.jagat.or.jp/BOOKS/PCsale/saleindex.html
昨年、アサツー ディ・ケイはDRO(Direct Response=Optimization)(R)を提唱した。これは、広告主にとって優良顧客を獲得するための最適な方法を提供するサービスである。ここで言う最適とは、「クリエイティブ+メディア」の組み合わせによって、CPA(顧客獲得単価)が最も低いことを意味する。当然、広告主は効率の高い広告投下を求めるので、広告主主導で行われるこの活動は今年も当面継続するであろう。これに対し、最近Webメディア側で盛んに騒いでいるのが「行動ターゲティング(Behavioral=Targeting)」という広告手法だ。これは、自社サイトへ訪れるユーザーのネットサーフ行動を把握し、個々のユーザーにとって有益な広告や情報を掲示するというもの。例えば、検索サイトで「ペット 旅行」をキーワードで情報検索し、ECサイトでは「ドッグフード」を購入しているユーザーの行動履歴をメディア側で把握し、そのユーザーに「犬と一緒に泊れる宿」や「ペット保険」などの広告や情報を提供しようというものである。確かにこの場合、宿泊施設や保険会社からすれば、ニーズの高い見込み客とのマッチングが保障される。
しかしその反面、2000年に米国Double=Click社がプライバシー擁護団体からプライバシー侵害に当たるとして活動を停止させられた例があるように、メディア主導で行う手法にはまだ課題が残されている。一説によれば、奴隷制度の影響で、人に数字を刻印して管理することを「悪魔の仕業」として、米国に限らず、キリスト教文化圏は嫌うようだが、韓国のように背番号制(住基ネット)を敷いている国もある。そのへんは賛否両論がある。前述の例で、犬の飼い主が、銀座のグルメ情報を見ようとしたら、そのページに「犬のおむつ」の広告が掲示されてたらどうだろうか。
ユーザーは、必要な時に必要な情報が欲しいわけで、それも、ある程度信用のおけるサイト(相手)なら、自身の要求に沿って必要な自分の情報を開示してくれるものであり、例え履歴であっても本人の断りなしに収集されるのは気色が悪い。
少々話はCRM領域にそれるが、札幌市立大学の武邑教授が語られた「“一見さんお断り”の京都お茶屋に見る和製CRMテクノロジー」というのがある。つまり、客(ユーザー)を平等に扱うのではなく、なじみの客というよりは、店を好んで利用している客には、お店も放ってはおけないわけで、手厚く対応するのは日本の昔から行われている慣わしである。この客と店との関係において、当然、双方で暗黙の了解のように一定のルールが定められている。客の嗜好(しこう)や流儀、作法に合わせて店はその客に「最適な」おもてなしをする。それは接客する女将や店員だけでなく、客の来訪時に出迎える際も、「おいでやす」「おこしやす」を使い分けてほかの客には分からぬように、確実に厨房にまで来店した客の情報を伝えるという凝りようだ。こうした関係を構築することこそ、まずはメディア側に必要だろうというのが筆者の考えである。活字媒体も同様であろう。
話を戻そう。20世紀末にあった「ワンto ワン マーケティング」という顧客一人ひとりとのコミュニケーションによるLTVの拡大化、そして昨年まで話題だった「ロングテール理論」、それら2つを実践し、成功した企業はどれだけあったのだろうか? 結局、この「個別対応」に疲弊してCPAの低下どころか業績自体の成長を見ないことを理由に、安直に「行動ターゲティング」に着目しても「3度目の正直」にはならないだろう。まずは、ユーザーの情報を段階的にでもユーザー自身から能動的にいかにすれば開示してもらえ、その気持ちに対しどうこたえることで関係を維持できるのかを再検討してもらいたい。