社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)「プリンターズサークル」5月号へ寄稿]
広告業界にいると、よく尋ねられるのが、「普段の情報源と最近の関心事は何か」なのだが、筆者がしていることは、毎朝、日経新聞や主要Webニュースサイトやメールニュース、加えてRSSによる特定の企業情報ぐらいを斜め読みしている程度である。特別、業界の裏事情に詳しい知り合いやネットワークを好んで作るタイプでもない。ただ、自然に行っていることと言えば、一つひとつの情報を関連付けること。相当世間ずれしていなければ、企業がアクションを起こすに至る過程でだいたい何かしら影響を及ぼされた出来事がある。そこから派生したものが、結果としてニュースになってわれわれの元に届くわけだから、月並みながら、その事象を知るだけではなく、「なぜ、そうなったのか」を自分なりにその「因果関係」を整理して考える「癖」が付いているようだ。業務上こうした「癖」が「その後」を読む上でも有効に作用するわけであり、ビジネストークでは不可欠なものとなる。学問の世界では“社会学”と呼ばれるのだが、こうした指向性が昨今、サービス業界においては大変薄れているように思える。ましてや、商品・サービスが多様化している広告市場では表 層的な部分だけを「調査」という名で切り取り、予測したところで本当にそのとおりになるかは大変疑問である。2月、電通から恒例の「日本の広告費2007年」が発表された。いきなり7兆円と前年から1兆円以上も増えてしまったわけだが、これまで「広告」として算入していなかった①屋外:屋外ビジョン ②交通:タクシー、空港 ③折込 ④DM ⑤フリーペーパー等々を加算し、ネット広告の制作費までを加えたとのこと。何だか怪しい話だ。
そもそも「メディア」をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の「マス4媒体」とその他メディアと規定し、その4つ+その他一つで日本の広告費を算出してきた方法を、ネット広告を始めニューメディアが成長し、「その他」では済まされなくなり、その内訳を細分化してきたが、これまで算入していなかったものまで加え、2年以上さかのぼって発表されても何のための統計か、訳が分からなくなっている。これからの市場推移についても、単純にテレビ広告予算減少分がネット広告にシフトしたような話もおかしい。事実、先日ヤフージャパンの井上社長と会談した際も「そんなにもうかってない」ときっぱり言われていたのが象徴的だった。商品の定価や生産量が変わらない場合は、当然メーカーがその商品のマーケティングコストに掛けられる予算は変わらないハズが、削られたテレビ予算がどこに消えたのか把握できない情けない状況だ。ネット広告におけるアフィリエイト(成果報酬型)広告に至っては、モノによってはお金をいくら積まれても成果だけでは使い切れない状況にある業務も発生している始末。一方、今度は雑誌に目を向けてみると業界自体は確かにダウントレンドながら、起死回生の策であろう「付録」は、昔から児童向け「学習」誌の専売特許だったが、最近は女性誌にさまざまな“ふろく”=化粧品やファッション雑貨のサンプルが付いている。この料金は「雑誌広告」になるのだろうか? 広告企画を立てるのにメディアごとに予算を考えるのは全くナンセンスであり、まず大事なのは、「何をするための施策が今必要なのか」であり、その施策を判断する過程として、そもそもターゲットであるコンシューマーに対するインサイト(洞察)がどうで、それに対してどのようなアプローチが有効なのかを見極めることである。メディアの使い分けはその次の話であればよい。そのためにも“社会学”を戦略の視座として利用するのが得策だ。逆を言えば、自分の売りたい商材をこのロジックに乗せてしまえば何でも売れるということだ。お試しあれ。